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第一部 祭りの前夜 (前編)
1 地球の終わりと共に(一)

 「今、地球に輪がかかりその輪が大きく拡がり始めました。それは地軸を三十度に傾けたことになります。つまり輪の質量が地球自体の位置関係をかえているのです。そして地球はいよいよ危機にはいりました。地球が静止する時が近づいたからです。」

 太陽系連盟よりの通信は、コスモス総合研究所の所員たちを極度な緊張状態にさせた。

 「それは何日頃でしょうか。」

 コスモス総合研究所からの送信である。返信はすぐに受信された。

 「何日という質問には答えられません。我々が今まで計算したデーターは地球上において偉大な力を持つ方によって度々に修正されてきました。その度に地球は救われているのです。今度の場合も我々はただ我々の考えによって計算して得たデーター以外に予測する事は不可能なのです。」

 この交信は、コスモス総合研究所が開発したエーテル波動通信器によって行われていた。エーテル波動通信器とは音が分子構造に光やX線が原子構造に振動を及ぼすのと同様にそれ以上に高い振動数つまり想念波が素粒子の振動に影響を及ぼすのを応用したのである。現代科学はまだここまで進んでいなかった。ただコスモス研究所だけが独立にトップレベルを進んでいたのである。

 「太陽系連盟にお伝えします。この地球にかけられた輪は地球内部から発生したものと私は考え、これは地球のバランスを安定させる為の重力制御の一種と考えられます。この輪の発生の為、一時的に地軸が二十七度から三十度まで三度傾いた結果になりましたが決して地軸が急激に傾く事を意味していないと思います。むしろ、地球内部に何かの変化が起きたと考えるのですが。」

 「確かに貴方の考える通り地球は変化か起き始めている。これは地球人が今まで種々雑多な宇宙からのメッセージに惑わされていたのが解放され、ようやく地球人自身の眼で地球を見始めたからだ。地球にかけられた輪は宇宙からの雑多な電波や放射線を遮断させるスクリーンの役目も持っている。今まで地球はストレートに何でもかんでも消化しきれない程に宇宙からの様々な電波や放射線を吸収しすぎた。それが今日混乱の社会を作っていた。今、地球の輪に依って太陽系内だけの受信に留めている。これは我々がずっと望んでいた事だった。が少し遅すぎる。地球がこうなる以前に我々との交信を通して地球危機の打開の為に地球人は努力すべきだった。いや、我々はたくさんの事がらを地球に既に送っていたのだ。しかし、地球上の指導者達はそれを知ってか知らないのか、それらの警告を無視し続けてきた。又ある人達はそれを利用して金もうけをし、又ある人々は宗教を作ってしまった。又、多くの人々を円盤にも乗せたが、それが何の為にかを考えず自分達が特殊な人間のように思ってそれで充分に満足してしまっている。何故人々は我々も貴方達も同じ宇宙の中にそして太陽系の中に住んでいるのに我々と同じだという事が判らないのだろう。我々に理解できる物は貴方達にも理解出来るという事をなんで知ろうとしないのであろう。我々は、他の星の人々とも連盟を作り努力してきた。ある時は貴方達の大国であるアメリカのホワイトハウスに多くの円盤で取り囲み我々の実在が本当である事を証明しようともした。又、原子力戦争に連がる重大な危機に対しても回避させようと努力してきた。なのに貴方達は我々を単なるUFO騒ぎの物語にしてきてしまった。貴方達地球人はこれらの事を科学的に解明しようとせず常に商業ベースでとらえようとしている態度には驚くべきものがある。我々は貴方達コスモス研究所の人たちに対し、真の地球人の姿を初めてみる気がする。我々は貴方達に協力する。今、地球上で起きている異変は我々の星にも直接的に大きな影響を受けるので我々の問題ともなっているからだ。」

 太陽系連盟と対等に交信しているコスモス総合研究所とは一体何なのか。彼等コスモス総合研究所では地球の異変のみならず、太陽系からさらに外側一帯の宇宙空間までの大異変を既に予期していた。それは太陽の極が変化し始めた頃から一つの研究データーとして起こりうる可能性の事件として計算されていたからである。

 「コスモス総合研究所の皆さん。ただいま土星での会議の結果、二~三日中に我々の円盤を貴方がた地球に送る事に決定がなされました。金星からも相当の人々を送る事に決まりました。この事は大変危険な事ですが、それしか地球を援助する道はないと我々の連盟で決まったのです。

 地球は我々の計算では急激な地軸の傾きによる自転の回転速度のブレーキが地球の大気上と地球内部に大きな変化を起こしその為地球上では大風が吹き荒れ、地震、火山の爆発が繰返され、火災がひっきりなしに起こるだろうと予測しています。やがて貴方達の東京は地球内部の空洞が重力磁場に押し潰され、一部地表面に抜け出る事に依って一瞬の内に陥没してしまうだろう。

 これは過去においてもムー大陸やアトランティス大陸の大陥没と同じ状態に近いが今度の場合はそれだけに留まらず、地球は軌道面を外れて栓の抜けた風船の様に宇宙空間に飛び出してしまうのです。その時、貴方達地球人は重力地獄に落ち、暗い死の空間に漂わされ永遠の苦しみを味わなければならない結果となるのです。つまり重力磁場に依って時間が変化され原子組成も変化すると同時に地球自身がゼロ次元に向って縮小してゆく結果の為です。

 これは貴方達が考古学上、地球上において過去にたくさんのマンモスが瞬間の内に凍ってしまっている事実を既に発見していると思いますが、これと類似的な現象と見る事が出来ます。つまり地球自身が安定した磁場を保てず原子組成が結晶しないと地球はゼロ次元に向かって永遠に縮小する為にその中の生物は地球上で言う死という状態はもう起きず、肉体界と幽体界が混合され丁度、貴方達地球人が呼んでいる夢という状態と同じ物に似るでしょう。もし貴方達が永遠に続けて夢という物を見なければならないと考えるとそれは非常に恐怖な現象です。一人一人の意識に依って見える物が違い、そこには共通とした視覚的現象は見えないからです。しかし、貴方達地球人は既に思考的には個々バラバラにして個人的世界を造りあげています。それが現実化しただけの話しです。つまり地球人が望む通りの地球に変化してしまうのです。その時、貴方達地球人は個人では生きられないと考えるでしょう。しかし、もうその時は遅過ぎるのです。一人一人見る物、聞く物が違ってどうして共通の意志伝達が出来るのでしょう。貴方達地球人は今の状態でも共通のテーマや共通の問題を考えられずして貴方達一人一人がそのまま宇宙だと思っている状態ですからそれよりさらに悪化した状態では先ず不可能と言えましょう。我々は、同じ太陽系星人としてこの事を地球人全ての人々に警告したいが為に地球に度々訪れているのであって遊行している訳ではありません。」

 コスモス総合研究所の所員は騒然とし始めた。二~三日中に東京上空を無数の円盤が飛来してくるという事は確実に日本をパニック状態にするという事と同じであった。

 “早い、来るのが早い。まだ我々が為さなければならない事はたくさんある。今の事態をたとえテレビを独占して人々に知らせようとしても、ただ混乱を招くだけだ”

 所長はそう考えた。彼はまだ二十代の若き青年であった。が、他の幾人かの同じ年代の若者達は興奮ぎみに騒ぎ始めた。

 「おい、円盤が来るって!」

 「やった!終に円盤に乗れるか?」

 所長はやや怒りぎみに所員達に訓示した。

 「間違えるな!個人的に物を考えるな。円盤が来ると言う事は我々の力もここまでだと言う事だ。我々は何の為にここまで努力してきた。単なる個人的センチメンタリズムだったのか。我々の科学は彼等太陽系の進んだ科学よりも勝るとも劣るとは私自身考えていない。ただ我々には人々の協力と多くの資金が得られなかったという事だけだ.アダムスキーは人々に宇宙船を作れと講演した。しかし、我々はその様には言わない。逃げる者は常に逃げなければならないからだ。地球自身が一つの宇宙船だ。この世界において生きられない者は他の世界に行っても生きられない。当然の事だ。」

 所員一同はこの所長の言葉で沈黙の中に入った。所長は落着いた声で通信をとった。

 「太陽系連盟にお答えします。事態は急激な問題である事は察しますが、今ここでの急激な大挙円盤の来訪は下手をすると却って大きな混乱を引き起こし事態が収拾つかない結果になる事も考えられると思います。まだ地球の人々は今の状態を理解していません。我々が過去においても地球の危機を救いました。それはそれらが認めている事だと思いますが今回の場合もまだ可能性はあると思います。それゆえ、その前に貴方達幾人かの太陽系連盟の代表の方々と方法論において話し合いをしたいと考えます。」

 「その件について連盟会議に報告してその結果が出たら又、連絡する。」

 通信はこの事で一時中断した。

 コスモス総合研究所・・・この研究所の存在は一部の人達を除いては世間ではあまり知られていない。秘密な訳でもないが高齢化社会の系列化した権威主義の世の中では誰も認めていなかっただけの事である。しかし、その名前は度々新聞で見かけられていた。だが新聞の記事を読む限りこの研究所の実体は一般人にはまったく理解出来ないものであった。だがヨーロッパやアメリカでは逆に一部分ではあるが地球上でもっとも素晴らしい研究所と評価されていた。

 ヒマラヤのある場所・・・白い円柱形の塔が八千メートル級のヒマラヤ山脈を背景に天に向かってそびえ立っていた。中はガランドウであって白い石の階段が地下と天井を貫ぬいていた。

 「海底王国よりついに二重のバランスシートスクリーンが地球に掛けられたな。あと残るは五つ」

 「大師よ。この異変は何がゆえに起き何がゆえにこの異変あらん?」

 「シュミーよ。善く聞け、この虚空界を離れて生命は実在し得ない。天上界の諸々はまだこの事を悟り得ない。彼等は地球が終わりだと言う。しかし、生命がある限り終わりはない。彼等が終わりだと思った事は実は始めであって、始めは又終わりであり、終わりは又始めなのだ、実にその中間状態こそが久遠なのだ。この久遠の中に様々な原因があって様々な相と様々な性、様々な実体と様々な力、様々な作用に様々な縁、様々な結果に様々な報われ、それらがみな関係し合い一体となって秘められている。それが顕われた世界が如の世界である。すなわちエーテル界である。ここに全ての現象は記録されている。これをアカシック・レコードとも言う。これに依ってどんな昔の世界であっても今の様に見る事が出来る、シュミーよ。善く見よ。この大いなる光は親太陽である。」

 シュミーの前に立体スクリーンが顕れてその中に輝く白色光の光が顕れていた。

 「この親太陽から、二つの光が発せられたのを見るがいい。二つの目とも言うべきこの二つの光の一つは、水を表す海王星であり、もう一つは火を表す今の太陽である。海王星の光は青く太陽の光は赤い。この海王星より生命が生まれ、人類が生まれたのだ。ここには始めは低級な生物体は生まれていない。先ず高等な生物体から発生し、条件が段々安定してくると低級生物体が顕れ始める、決して進化論ではない。人類はどんな環境の中においても生存する英知を持っている。これは他の生物体にはない事だ。海王星は天王星、初期の土星が生まれた第三軌道の時に大爆発してしまった。これは最初の人類は今の人類よりも高等な能力を備えて惑星自身も制御する事が出来ていたのだが、長い時間の中で安定した生活環境が逆にマンネリ化を生み人類は段々と自己的世界観を持ち、彼等の偉大な力が逆に海王星の廻りに異常な磁場うず巻を造り、それを予見した一部の海王星人類を除いては残りの堕落人類は海王星の爆発と共に滅んでしまった。この爆発の後、海王星はその質量を減らして第四軌道に入ったのだ。

 シュミーよ、かつて言った事があるが今の太陽は太陽自身の姿ではなく、水星の軌道の中にもう一つの惑星がありその惑星はいまだ固まらず、ガス状になって太陽を取巻いている為に我々は見かけの太陽を見ている事を。」

 「大師よ、私は聞いております。そして、今またもう一つの惑星が生まれようとしている事を。」

 「その通りだ。シュミーよ。それと同時に海王星は太陽軌道を外れて再び爆発してその質量を太陽に帰しようとしているのだ。しかし、その様な自然法則とは反対に海王星の外側を冥王星が太陽系の軌道に入り込んで海王星を内側に圧力をかけている。この為に、海王星は非常に歪んだ不安定な動きを示し、それが太陽にも及んでいる。それで今だに第一軌道の惑星は固まれず、海王星は老化現象の中で爆発エネルギーを蓄積している。このままでは海王星は太陽系の磁場の中で爆発しかねない。本来宇宙には老化という言葉は無い、自然の中では全てが自然法則にのっとっている為に若さそのままなのである。

 偉大な釈迦牟尼仏は生老病死について悟りを開く時に、最後に不老の悟りのみを残していた。シュミーよ、死を悟った人はどれだけいるだろうか?」

 「大師よ、もともと死はなく死の苦しみはそのまま生の苦しみであります。昔より仙人と呼ばれた人達は皆不死の人達ばかりです。人々は生の中において業を造る為に輪廻を繰返し、その度に生死の苦しみを味わうのです。」

 「その通りだ。シュミーよ。死などはもともとない。しかし、老はどうか?たとえ一千年一億年生きようと老いたる身なれば何の生の価値がありようか!その為に生まれ変わって又、新しく若さを得ようとするけれども若きは若さの享楽を持って悟る事をせずに又老いて死の悩みを持ち始める。不老の薬こそ、不老の法こそ仙人の求めるものであった。

 釈迦牟尼仏は菩提樹の下でそれを瞑想していた時に、菩提樹の女神が顕れて

 “菩提樹は種の時も今この様にして青々と天にそびえた大樹の時も常に若々しく老いるという事はありません。ゆえに外から害されなければ死という物も、病という物もありません。”

 との女神の言葉に悟る事があって、生命その物はもともと老いる事はない。人を害せずば又、人からも害せず、自然を害せずば又、自然からも害せられずゆえに死も病もないと“煩悩即菩提、菩提即涅槃”という縁起を知るのである。

 シュミーよ。人間の生命のありかたは一体何か?それこそ若さを保つ鍵なのである。美は若さと共にある。真理は若さと共に生きづくのだ。自然と一体でない時、それは不調和そのまま、つまり老化なのだ。

 我々が老いる苦しみを受けるのは海王星の苦しみそのままなのだ。これこそが太陽系星人の待っている業なのだ。」

 「大師よ。海王星人は今もいるのでしょうか?」

 「今もいる。太陽系の原子人類、すなわち彼等こそ、海の王と呼ばれた龍族と呼ばれた人類なのである。彼等が北極は龍座に位置を占め、その信仰があった為そう後に呼ばれたのだが、彼等の星が爆発した時に善と悪に別れていてそれが今日に伝えられている白龍、黒龍の伝説なのである。天王星が第三軌道に入り黄金期を迎えた時に既に自己中心的海王星人の影響を受けていて天王星は支配国家になっていたのである。天王星の衛星は無数を数え、それらは海王星の爆発のさいの残骸だが海王星人類にとって適した場所でありその様な国家的衛星は九十九を数えた。そして、その頃の見かけの太陽は木星であった。すなわちゼウスである。

 やがて土星が人類の住む適した条件に入ると一部の人類達が降りた。これは神話として今も残されている。しかし、土星は重力が大きく違う為に肉体の構成が変化し、以前の様に自由に飛び廻る力を失ってしまい、土星の星そのものの物体的力に支配される様になってしまった。だがここでは物質が持つ物質的享楽があり、初めのうちは楽園の状態であった。しかし、ここでは自己的な考え方が段段と世界を支配し争いも起き始めた。ゆえに人間の倫理が説かれ、規律が生まれ、法的支配国家に移り変わってゆく。ここでの堕落者は自然的条件の厳しい火星に移されたり、後には地球に送りこまれたりしているのである。」

 「大師よ。それはどの様にしてでしょうか?円盤に依ってでしょうか?」

 「シュミーよ。例えば今おまえが死んだとする。どうなるのか?」

 「大師よ。もし私が死んだとすれば肉体の私はこの地球の法則に依って自然に帰するのであって私は霊体となってなおここに留まるでしょう。」

 「その通りだ。シュミーよ。同じ様にして彼等土星人が死んだとしても土星の要素である肉体は土に帰るけれども霊体は元の天王星人あるいは海王星人に戻るのである。もし天王星人が死んだとしても天王星の要素である物が天王星の土に帰するのであって霊体は海王星人に戻るのである。つまり肉体は衣であって幾重にも着る事が出来るのである。ゆえに霊体を通して送りこむ場合もあれば円盤を通して送りこむ場合もある。その時のその人間の状態や送り込む宇宙人に依って違う。

 ただ問題なのは自分が自分をわからないまま他の世界や又、同じ世界において転生する事は苦しみそのままなのである。だが個人の問題は太陽系全体の問題も同時に受けている。すなわち海王星の問題は今日そのまま太陽系の問題となっている。これが解決されない限り人々は大きな業の中でずっと苦しまなければならない。」

 「大師よ。この原因は一体何なのでしょう。宇宙の法は争うという事はない。争う物は自我の心のみと考えます。この太陽系の相はその前にある何かの争いの心そのままの姿だと思います。とすれば一体何の争いの心があったのでしょうか?」

 「善いかな、シュミーよ。その通りだ。実はこれこそが帝釈天と阿修羅の戦いなのだ。この海王星に大きく影響を及ぼしている冥王星の外側に第十番惑星とも言うべきブラックホールが存在する為にこの事が起きているのだ。昔、このブラックホールに三つの星がその軌道を廻っておりその一つが今日の冥王星であった。あとの一つは既に光の水平線に入っており、もう一つは入りかけている。

 このブラックホールとも言うべき星は過去において地球の様に美しい星であった。しかし、今日の地球と同じ様に自己的利益主義のみに働き核戦争を起こして、その軌道上を外れ、暗い宇宙空間に飛び出してゼロ次元に収縮している姿に変ったのである。

 すなわち質量がそれ程大きくなくてもその星にかかる重力磁場が大きければブラックホール現象は引き起こされる。質量そのものは一定した重力磁場の中においてのみ計算されるものである。

 シュミーよ、その星の最後の時も鉄の王国と呼ばれた時代だったのである。鉄は核反応の最終物質である。そして磁力の影響をもっとも受ける。

 冥王星はその軌道を太陽系に近づける程、ブラックホールに落ち込む危険から逃れる事になるが、その反面太陽系にこのブラックホールとの相互影響を非常に大きく及ぼす。

 しかし、冥王星に住む人々にとっては死活の問題である。彼等は無限地獄とも言うべきゼロ次元世界に落ちるよりはまだ業の中に生きていた方が良いと考えるのは当然であろう。彼等の太陽系の進入はそれまでの太陽系のリズムとは異とするもの。当然、争いが行われ、これが長い戦いになっていた。これ以上の話は私の及ぶ範囲ではない。ただこの様な様々な原因に依って地球は今日の姿をとっているという事だ。」

 大師はそう言って階段をのぼろうとした。

 「大師よ。冥王星に人々は今も住んでいるのでしょうか?」

 大師はその問に足を止めたが姿勢を変えずに言った

 「シュミーよ。問いのままに問いをなしてはいけない。シュミーよ。それでは聞くが冥王星に今も人がいるとしたらどう思うのか?」

 シュミーは黙っていた。

 「生命という物は形にこだわってはいけない。目に見える物だけが生命ではない。シュミーよ、盲でつんぼでおしの人がいるとする。その人は人間ではないだろうか?」

 「いえ、大師よ。その人が盲でつんぼでおしであってもその人は人間と呼ばれます。」

 「シュミーよ。その通りだ。その人がたとえ何も見えなくても聞こえないとしても我々はその人を人と呼び又、彼が何もしゃべれないとしても、その人の相や動きを見て何をしたいのか、何を言いたいのかが理解出来る。しかし、彼にはわからない。だがもし彼が心を持って心の中で世界を見つめたら私達がいる事を彼は知るだろう。

 その様にもし我々が遠いからと言って、見えないからと言って他の星に誰もいないと思ってはいけない。彼等は我々を見て我々を人と呼んでいるからだ。地球人は今日、テレパシー能力を失っている。これは彼等にしてみればつんぼの様なものだ。又、第三の目の能力も失っている。これは盲の様なもんだ。人間の持つ本来の能力は空間や物質的な物に依って障害を受けるものではない。すなわち人間は何処の宇宙でも適応出来る最高の表現体なのだ。我々地球人がこの様に宇宙から見れば盲でつんぼの様であっても心さえしっかりと持って心の中で見つめれば彼等よりもずっと豊かな人類と言えるのだ。この様な世界こそ弥勒が出現する世界なのだ。」

 “弥勒”

 シュミーは突然のこの言葉に息を切った。

 「心の世界でなければ弥勒は見えない。何故なら弥勒は幾十億年と心の慈悲行を続けている御方だ。我々が同じ様な心で見なければ弥勒も見えない。弥勒は形ではなく、その様な心の顕れをそのまま姿に顕わしたものだ、心以外では見えない。ゆえに兜率天に住むと言われている。」

 大師は再び階段を登り天井の間に出た。夕日の太陽は黄金色に輝いていた。

 「今や東方の国、日本という国が太陽系を始めとしてさらに外側の宇宙から注目されている・・・」

 「大師よ。私がかつて日本に行った時、コスモス総合研究所の若者達や石川雄一という青年に会いましたが、この事態をどう切り抜けるでしょうか?」

 「さて、私にもわからん話よ。この二つの輪は龍神のなせる力。それにしても彼等若者達にこの様な力が加わると言う事は彼等はかつての太陽系人類の粗である海王星の方達かな。

 シュミーよ。かっての善き海王星人は太陽系を始めとして様々な銀河系に通じている金剛界に逃げて海王星の爆発から生き延びたのである。今、地球上でも同じ様にして金剛界に入ろうとして密教ブームになってきたがこれはその頃の想念の残像現象が現れたと言える。だが今になって修業をしても遅い。既に末法。法のみあって証なし、華厳の道は塞がれている。法華の道のみ。これを彼等が悟かな。天界の者達には地球は救えぬ。今度の異変は昔より知られていた事。ただの異変ではない。」

 “ただの異変ではない。仏は無量劫においても会い難し、ただ一大事において出現するのみ”

 シュミーはその言葉を知らずと口の中に唱えた。