02

『On Your Mark』(ジブリ実験劇場)
もともとは、CHAGE&ASKAが1995年~1996年にかけて開催したコンサートツアー「SUPER BEST3 MISSION IMPOSSIBLE」の中での演出としてコンサート会場で上映されていた。
これは、PVを制作する際にASKAからアニメーションでやってみたいと持ちかけ、それならばと宮崎作品のファンであったCHAGEが提案したアイデアだという。
監督はタイトルや歌詞をあえて曲解(※ねじまげて解釈すること)し悪意に満ちた映画に仕立て、いつか来る未来に生きるということをイメージして制作した。

《 ストーリー 》
05

36

地表が放射能で汚染され、病気が蔓延し、人類が地下に住むようになった世紀末後の未来の都市が舞台。

52

34

33

あるカルト教団「聖NOVA'S」の施設を襲撃、制圧した武装警官隊。

33

21

その中の警官2人は、教団施設の奥で翼の生えた少女を発見する。

30

54

2人は彼女を救助するも、研究資料として今度は政府機関の施設に連れ去られてしまった。

21

01

10

2人は彼女を空へ帰そうと奮闘を始める。


《『月刊アニメージュ1995年9月号での宮崎駿のOn Your Markインタビュー』》
03

歌詞をわざと曲解して作りました。
――「警官」と「天使」なんて、まるで押井守さんの作品のようですね。

宮崎:
押井さんが天使が生まれるの、生まれないのとか、もったいぶってやっているから、さっさと出しちゃった(笑)。
といっても、天使だとは言っていないし、鳥の人かもしれない。それはどうでもいいんです。

――6分40秒の中に、映画1本分の内容が詰っていると感じました。

宮崎:
暗号のようなものは、いっぱい入れてあるけれども。音楽映画だから、見た人の感じたように受け取ってもらってかまわないんです。

23

――冒頭の、のどかな田園風景の中に建つ奇怪な建物は何ですか。

宮崎:
どう解釈してもらってもかまいませんが。その直後に出てくる放射能注意のマークのついたトラックを見て、何となくわかってもらえればいいと思うんです。地上には放射能があふれていて、もう人間が住めなくなっている。でも緑はあふれていて、ちょうどチェルノブイリの周囲がそうだったようにね。自然のサンクチュアリ(聖地)と、化している。で、人間は地下に都市を作って住んでいる。実際はそんな風には住めなくて、地上で病気になりながら住むことになると思いますが。

――このアニメは「On Your Mark」の音楽映画作品として作られていますね。

宮崎:
「位置について」という意味のタイトルだけれど、その内容をわざと曲解して作っています。いわゆる世紀末の後の話。放射能があふれ、病気が蔓延した世界。 実際、そういう時代が来るんじゃないかと、僕は思っていますが。そこで生きるとはどう言うことかを考えながら、作りました。
きっとそういう時代は、ものすごくアナーキーになっていく一方で、体制批判というようなことについて、ものすごく保守化しているんじゃないか。それはまだ失うものがあると思っているから。何にもなくなると、ただのアナーキーになっていって、のたれ死にが始まるんです。そういうものを紛らわしてくれるのは、 「ドラッグ」や「プロスポーツ」や「宗教」でしょう?それが蔓延していく。そういう時代に、言いたいことを体制から隠すために、隠語にして表現した曲と考えてみた。ちょっと悪意に満ちた映画なんです(笑)。

――例えば「いつも走り出せば、流行の風邪にやられた」という歌詞の、「流行の風邪」というのは、放射能や病気に覆われた世界のことでしょうか?

宮崎:
(肯定も否定もせず)地球全体の歴史から見れば、人間の問題なんて流行の風邪みたいなものですからね。

――……二人の警官が救い出す天使は、混沌とした世界の一筋の希望のようにも見えます。「僕らがそれでも止めないのは……」という歌詞の通り、天使を救出するシーンが何度も繰り返されていますが。何度かの失敗の後、混沌とした世界から、一筋の救いのように彼女は青空に飛び立つ。でも、警官たちは地上 に取り残されて……。

宮崎:
彼女が救世主だったり、救出を通して彼女と心の交流があったというわけではないんです。ただ、状況に全面降伏しないで、自分の希望、ここだけは誰にも触らせないぞというものを持っているとしたら、それを手放さなければならないのなら、誰の手にも届かないところに放してしまおうという。そういうことですよ。 放した瞬間に、心の交流がちらっとあったかもしれないけれども。それでいい、それだけでいいんです。……きっとまた彼らは警官の仕事に戻るんです。戻れるかどうか知らないけれど(笑)。

――戻る世界は、また「流行の風邪」の世界。

宮崎:
結局、いつもそこから始まるしかない。メチャクチャな時代にも、いいことや、ドキドキすることはちゃんとある。ナウシカの「我々は血を吐きながら、繰り返し繰り返し、その朝を越えて飛ぶ鳥だ」です。(転載終了)

 昨年に「風立ちぬ」の映画を最後に引退を宣言した宮崎駿監督ですが、宮崎アニメの代表作といえば「ナウシカ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」など数々あるものの、今回ご紹介する「On Your Mark」は、まだ一般的にはあまり知られていないようです。

今から19年も前に公開されたわずか6分40秒の短編映画「On Your Mark」、音楽PVのアニメーションということで登場人物の音声も一切ありませんが、自分自身、ジブリファンの1人であるものの、正直今更ながらも初めてみて、これほど内容の深いジブリ映画があったのかと驚きを隠せませんでした。

何はともあれ、まずは無料で公開されているので、是非とも一度ご覧下さいませ。



00
※放射性標識

12
※チェルノブイリの石棺

至る場面で登場する「放射性標識」や、まるで「チェルノブイリの石棺」を連想させる平穏な住宅街に取り残されている巨大な建造物などを見ると、19年も前とはいえ、この映画はチェルノブイリの過去を皮肉した映画でありながらも、まるで現在の福島原発がメルトダウンした日本の状況を予言した映画でもあるように思います。

58
※警官の男の胸には“NEO KOENJI”と書かれている

それも、この映画に登場する警官の胸には“NEO KOENJI”と書かれているのを見ると、これが東京の“高円寺”を意味しているのであれば、この映画は未来の東京が舞台であるのかもしれませんが、地上全体が放射能にまみれて人類が生息できない大地となっているのであれば、もしかすると、映画の中では東京に限らず、日本や世界全体が放射能汚染にまみれていることも考えられます。

「On Your Mark」は、単純に考えれば、宮崎監督による「原発への警告」というメッセージ性の強い映画ではありますが、それが目的の大半であったとしても、個人的には、それ以上にも様々な場面で興味深い描写がいくつもあったように思えます。

51
※「GOD IS WATCHING YOU(神は貴方を見ている)」

その中でも、多くの人が恐らくは「これは…!?」と目を留めたのは、この“1つ目のシンボル”のカルト教団「聖NOVA'S」の登場だったと思います。

まさか宮崎アニメで、1つ目のシンボルを目にすることになるとは思ってもいませんでしたが、ご存知のとおり、これは一般的に「イルミナティ」などの闇の秘密結社のシンボルマークとして知られており、実際にこの現実世界は、このシンボルマークの下で“悪魔ルシファー”を崇拝するカルト教団によって支配されております。

005
※漫画「20世紀少年」に登場するカルト教団の“ともだちマーク”

とはいえ、今でこそ民放テレビでも「フリーメーソン」「イルミナティ」の単語が出て来るので、知っている人はすぐにピンと来るマークだと思いますが、それでも現在でもまだまだ1つ目のシンボルの意味を知っている人は少数派であり、さらにこの映画が公開されたのは1995年なので、当時からすれば、このカルト教団が、なぜ1つ目をシンボルにしているのか、そもそもなぜカルト教団が登場するのかの意味も分からなかったと思います。

実際、映画が公開される数ヶ月前に「サリン事件」があったことで、映画に登場する「聖NOVA'S」「オウム真理教がモデルであったのでは?」とも噂されたようですが、実際には「サリン事件」の前に映画自体は作られており、当然ながらオウム真理教がモデルとなった訳ではないと思います。

ただ、ある意味この噂は正解であり、実際にオウム真理教を意図的に作ったのは世界的にも有名な日本最大のカルト教団であって、それを管理しているのはCIAであり、そしてその中枢の人々はアメリカという国家をも従える偽のユダヤ人、1つ目をシンボルとする悪魔教信者によって構成されています。

31
※バイオ蛸酢、塩サバ(合成)

そして、何気ないこのワンカットにも様々なメッセージが入っており、この居酒屋っぽいお店のメニューには「バイオ蛸酢」「塩サバ(合成)」とあって、恐らくは放射能による海洋汚染が深刻であることを示しているのだと思いますが、一方で警察官の腕のマークを見ると、そこには“天秤”のシンボルマークが入っているのが分かります。

001

002
※1ドル札の裏にある1つ目のシンボル

004
※1ドル札の表にある“天秤”のシンボル

実はアメリカの1ドル札の表にも“天秤”のシンボルマークが入っており、これはアメリカの財務省の意味でありますが、カルト教団の“1つ目”のシンボルは1ドル札の裏に描かれており、映画で対立する警察とカルト教団ですが、どちらのシンボルもアメリカの1ドル札に入っているシンボルが使われています。

この映画のように、治安が混乱している「アナーキー(無政府状態)」となった未来都市においては、カルト教団とはいえ、警察が一般人を容赦なく皆殺しにしており、一体世の中の正義とは何なのかと疑問を感じさせる社会を演出していますが、これは実際のところは今の現実社会とも大差なく、今もなお日本という国家においては、正義という名の下で警察や裁判所でさえも内部には善悪の両方が混在しており、それらを統括している政府や国家という存在でさえも、果たして本当に信用して良い組織なのか疑問の残るところばかりです。

それもそのはずで、この国は知らず知らずのうちにカルト教団によって乗っ取られて支配・管理されており、その連中からすれば、この国で起こった原発事故も単なる人体実験に過ぎず、国民はおろか、事故付近の住人にでさえすぐに真実を伝えなかっただけなく、今もなお放射能汚染に関する現実と真実を隠蔽し続けている状態であり、この先も何か国民にとって不都合なことがあっても、恐らくは大切なことは知らされないことでしょう。場合によって国の方針に従わない輩には、国家権力を駆使して強引に制裁を加えることだって考えられます。

47
※前半は原発もない緑豊かな町並みの中で天使は空へ舞う

30
※後半は車の車種もかわり原発だらけの世界で天使は空へ舞う

ところで、この「On Your Mark」という映画は、空想上の存在である天使が登場したり、また普通に一度見ただけでは何が何なのかわからないほど不自然な描写もいくつもあって、冒頭で主人公が乗っている黄色い車と、ラストの黄色い車の車種が異なっていたり、逃走の際に自動車が墜落して逃亡が失敗してしまうパターンもあれば、突然過去に遡って同じ場面が繰り返され、今度は自動車が飛翔して脱出が成功するパターンになったりと、宮崎アニメの中でも、かなり不可解な展開がいくつもあります。

これについては、宮崎監督が「歌詞を曲解して作った」「暗号のような物をいっぱい入れてある」と語っているとおりであり、この不自然な描写や不可解な展開は、見る側によって異なる解釈が存在するような仕組みになっているみたいです。

13

作家の岡田斗司夫氏によれば、この映画は、ほとんど戦力の無い相手を無差別に殺戮する行為から目をそらした1人の警官が空想に逃避する物語で、天使の少女は初回の襲撃シーンで死んでいる少女(白い衣服が翼に見えている)であると解釈しています。

そんな捉え方も必ずしも間違ってはいないと思いますが、このシーンはどちらかといえば「羽の生えている少女を探している様子」とも見えますし、中には「羽の生えている天使は、放射能による人類の奇形を象徴した映画である」という意見もあるので、本当に何事においても同じですが、情報というのは受け手側の持っている価値観において捉え方が千差万別なので面白いものであります。

ただ、個人的には、やはり原発を中心とした未来の放射能地獄の地上世界を危惧した映画である印象が強く、この地下都市などの存在も今の現実世界でもすでに造られているので、本当にこれから先に早急に、それも真剣に原発をどのように対処するのかを考えないと、この映画と同じ地上では人類は生息できない未来がやって来る可能性が高いように感じます。これから地殻変動が本番に入り、大陸の浮上もあれば、沈下もあるのだから……。

36
※脱出に失敗して落下するパターン

16
※脱出に成功して飛翔するパターン

そして、この映画で最も不可解な「脱出に失敗するパターン」「脱出に成功するパターン」のシナリオが用意されているように、今の人類がこの映画の未来のような悲劇に到達しないように回避できるパターンもあれば、このまま進んで取り返しのつかない未来へと進むパターンもあるのだと思います。

「On your mark(s), Get set, Go!(位置について, 用意, ドン!) 」

映画に登場する警察官2人は、自分達の意にそぐわない、このしがらみにまみれた地獄のような社会から天使という希望を持って自由の世界へと飛び出しました。

3月から4月、卒業もあれば入学もあり、別れは新たな出会いの始まりでもあります。人それぞれのタイミングがあると思いますが、周囲を見渡している限りだと、今までの自分を卒業し、本当の自分の始まりの時期が来ている人々が多くなっているように思えます。

過去の自分の殻を破り、今置かれている環境から飛び出すのを決めるのは大変勇気のいることであり、飛び出すまでは様々な困難もあるかもしれませんが、その先には本当に自分がやりたいことを実現できる世界が必ず待っていると思います。

4月という始まりの時期に、一般的な入学や入社に限らず様々な意味で新しい門出となる人々が増えていると思いますので、皆様が新天地でご活躍されることを心より願っております。