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 中東に位置するイスラエルは、多くの日本人がイメージするように砂漠の国であり、国土の60%以上が乾燥地に覆われています。

雨季は11月から4月までの期間しかなく、その降雨量も北部で平均700ミリ、南部では50ミリ以下と非常に少なくなっています。ちなみに日本の年間降水量は約1700ミリです。

この数値だけを見れば、どう考えてもイスラエルには水がなく、当然ながら水がなければ食物も育たないので、イスラエルで農業をやることは非常に困難であり、食料自給率も低く、多くの食料を海外から輸入しているように思われるかもしれません。

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ところが矛盾するようですが、イスラエルは砂漠の国でもありながらも実は世界有数の農業立国でもあり、食料自給率は100%に近く、自国で自給するだけでなくヨーロッパを中心に多くの農産物を世界中に輸出しています。

そのイスラエルの農産物(加工品を含む)の輸出額は2,541億円(2007年)であり、これは日本の農産物輸出額とほぼ同水準でありますが、人口700万人のイスラエルは四国より少し大きい程度の国土であり、農業従事者の数も40分の1未満であります。水が豊富で豊かな土壌に恵まれた日本とは異なり、イスラエルは国土の60%が乾燥地帯に属し、水資源に乏しい国であるのにも関わらず、農産物に関しては日本の50倍もの生産性を持っているともいわれています。

「国土が小さく、雨の少ない国で、どうやって農産物を自給する、それどころか輸出までが可能としたのか?」という疑問が生じるかもしれませんが、こういった過酷な条件下であるからこそ、ユダヤ人は一生懸命考えて知恵を使い、短期間のうちに血のにじむような努力によって不可能を可能へと変えてきました。

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※点滴灌漑

この砂漠の国を緑の国に変えた奇跡の技術の1つに、イスラエルの農業共同体「キブツ」が開発した「点滴灌漑(てんてきかんがい)」というものがあります。

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点滴灌漑とは、文字通り人間が病院で受ける点滴と同じように、植物にも1滴ずつ水を与える農業における栽培方法であり、イスラエルでは、その水を国土のいたるところの地下水を汲み上げて活用しています。

点滴灌漑技術が発明された当時、その目的は水の節約でしたが、この技術のメリットは、実際はそれだけではなく、ゆっくりと1滴ずつ灌水することで、根に必要な酸素が土の中に保たれ、根の活動が活発になることも分かってきました。

点滴灌漑栽培は、節水と収穫量の増加と品質の向上を実現しただけでなく、畑に無駄な肥料をまくこともなくなるので、経済的であると同時に環境に優しい技術でもあります。

そして、かつて日本の農業事情を良く知るユダヤ人は「全く同じ気候条件なら、水なら100分の1、肥料なら10分の1のコストで日本と同じ収量を生産する自信はあるよ」と答えたそうですが、過酷な条件下でも他国にひけをとらない農業産業を生み出すために徹底的に研究と努力を重ねたイスラエルは、ITやバイオ技術を駆使して農業の自動化・省力化する技術も発達させました。

世界最先端のコンピューター技術によって、点滴灌漑もコンピューター管理によるシステム化を実現し、制御された水の流れを直接植物の根のある部分に向けたり、コンピューター制御で水をまく時間帯や、液体肥料を水に混合して流す割合なども操作できるようにしたそうです。

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また、イスラエルでは水の70%以上が再利用されており、その目印ともなる紫色をした「再生水のパイプ」を荒野の中でもいたるところで見かけました。

ユダヤ人の知恵と努力、そして農家と研究機関との密接な協力関係が出来上がったイスラエルでは、狭い土地、少ない水、少ない肥料でも植物が育成できるように、灌漑設備や水の再利用、そして、それらをハイテク技術で管理し、すべて一貫した農業事業システムになっていてムダがなく、砂漠を緑に変えて農作物を輸出品にまでしています。

その品質は世界一厳しいドイツの残留農薬基準も技術力でクリアしており、まさにイスラエルは農業においては世界最先端の先進国であり、他の砂漠化や飢餓民で苦しむ地域でもモデルとすべき国家であります。

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※この写真の森もユダヤ人が砂漠から人工的に作ったもの

砂漠の厳しい環境下でも食料自給率は100%、原発もないイスラエル。

一方で水と豊かな土壌に恵まれているはずの日本の食料自給率は30%台にまで低下し、周囲は原発に囲まれています。

「イスラエルは危険で貧しい国だ」と思っている日本人も多いかもしれませんが、果たしてどちらが本当に豊かで安全な国なのでしょうか。

砂漠を緑に変えて地球を破壊から再生・維持する技術は、まさに人間が地球人として地球に存在している役割のもっとも大切な部分であり、これから先に急ピッチで地球再生を行う必要がある我々人類は、ユダヤ人、イスラエルから学ぶことはたくさんありそうです。

いずれにしても、これだけ過酷な条件下でも自給自足を実現出来ている国が存在しているので、日本の自給率を100%以上にするのはそんなに難しくはないでしょうし、日本人が本気を出せば急速にそれは実現すると思います。