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 9月20日の土曜日、鳥取県の智頭町で開催された「麻まつり」に参加してきました。

全国各地より大麻に関心のある大勢の方が集まり、熱気と希望に満ち溢れた素晴らしいイベントでしたが、この人口約7000人ほどの小さな町である智頭町が、ここまで全国的にも有名になったのは、つい昨年の出来事であります。

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それは、2013年5月に、震災後に県外から移住してきた上野俊彦さんが、地元の人々や町長の協力のもと、わずか55日間で大麻栽培者免許を取得し、約60年ぶりに智頭町で大麻栽培が復活したことがきっかけでした。

今回、大麻栽培が復活した智頭町の八河谷という地域は、もともと高齢化と過疎化が特に進んでいる限界集落とも呼べる地域だったようですが、若い上野さんが移住してきただけでなく、大麻栽培が復活したことで、大麻栽培に携わりたい、大麻を産業化したいという熱い気持ちを持った若者達が次々に移住をし、今では平均年齢が一気に下がって、地域に活気が生まれてきたようです。

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「大麻=麻薬」から「大麻=町おこし」となれば、大麻に関する新しい価値観と地域活性化の成功事例を日本全国にアピールする大チャンスであり、是非とも今後も智頭町の大麻栽培、産業化の行方を応援していきたいと思います。

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町の90%以上が森林に囲まれた智頭町は、都会に当たり前にあるものはほとんど何もありませんが、一方で都会には絶対にないものがたくさんある自然豊かな地域であり、今、本当の豊かさとは一体何かを考え、求めている人々から最も注目されているエリアの1つであります。

今回の訪問中、この智頭町の過去の歴史などを色々と聞かせて頂く機会がありましたが、そのお話の内容を聞いていると、この智頭町という町は、これからの地方自治体が学ばなければならない様々な革新的な取り組みを、以前から真剣にコツコツとやっている町であることが良くわかりました。

その代表的な取り組みが『森のようちえん まるたんぼう』の存在です。

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この幼稚園は、子どもを持つ親が「子どもにとって本当に大切なものは何か?」「智頭ならではの智頭でしかできない子育てとは何か?」を考えて設立されたものです。

園舎もなければカリキュラムも最小限であり、智頭の雄大で美しい大自然そのものが学び場、遊び場であり、自然の中で子どもたちの興味や関心を尊重した保育を行っているそうです。

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そのため窮屈な園舎で決められたカリキュラムをただこなすだけの保育ではなく、基本的には“お散歩”が中心で山、森、川などを自然を遊び場としており、時には農業のお手伝いなどもし、また大人達は、自然の中で自由に遊ぶ子どもたちを“見守る”というスタンスをとても重要視しているようです。

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そして、この“まるたんぼう”では週に1回『お料理の日』として、お昼ご飯を子どもたちで作っているそうです。

毎回メニューは決まっているようで、羽釜で炊いたご飯と、家から持ち寄った野菜で作る味噌汁であり、この味噌も自家製で、子どもたちが作ったものを使用しているようです。

四季折々の大自然の中を歩き回ることで、自分達が“生かされている”ことを知り、農作業を手伝うことで“いのち”を学び、また自分達が育てたもの、加工したものを食べることで“生きる”ことを実感し、本当に人間にとっても、子どもたちにとっても必要な保育、教育の原点がここにはあると感じました。

上野さんも、震災後に移住先を探している中で、この“まるたんぼう”の存在が智頭町への移住の決め手のきっかけであったようであり、後から大麻栽培の歴史のある地域であることが分かって、結果的に大麻栽培者免許の取得、智頭町の大麻栽培復活の経緯があります。

他にも同じような保育園やサドベリースクールも智頭町にはあり、現在は出産も自然出産の環境を整えようと町が主体となって動き出してもいます。

子どもの出産から、保育園、幼稚園から学校にまで一貫して町が、その町ならではの出来ることでの子育て支援を真剣に考えており、この取り組みは本当に素晴らしいものです。

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また、教育だけに力を入れているのではなく、町にいる高齢者を元気にしようとする試みも実践しており、山の間伐材をトラックで持って来ると6000円の地域通貨を町が発行して町内で使えたり、何よりも面白いのは「疎開保険」という制度です。

これは、智頭町以外の全国で保険に入った方のお住まいの地域で地震等の災害が起こってしまった時、ストレスの多い避難場所から智頭町へ“疎開”の受入れをする制度であり、具体的には、年間1万円の保険料を支払うと、万が一の際に7日間(3食付き)智頭町で生活できる場所と食事を確保するといったものです。

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とはいえ、年間何もなければ、そのまま掛け捨てのままというわけでもなく、お金としてのキャッシュバックはありませんが、智頭町の農産物などの特産品を会員に支給されるサービス(智頭野菜新撰組)も保険の中に含まれているようです。

この「疎開保険」も、最初は8人のメンバーから始めたようですが、現在では90名ほどの町民が参加してやっているようで、皆が小さな畑から少しずつ自分達で出せる分の農産物を提供し、それを集約させて全国の会員へと郵送しているそうです。

なんだか、こういった取り組みは高齢化や過疎化の地域を盛り上げるだけでなく、これから先のコミュニティや村構想のシステムの中でも、必要なモデル的な取り組みのようにも思います。

つまり、今でこそ「麻の智頭町」として、麻があるからこそ魅力的であり、有名となった智頭町という印象がありますが、過去の町の取り組みを聞いていると、逆に「こんな取り組みを実践してきた智頭町だからこそ麻も復活できた」と言えるほど、麻が始まる前から近未来のモデルとなる地域としての下地がバッチリな町であったのです。

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「自分達の町が将来消えてしまうかもしれない」。都会に住んでいる人々の中で、日常からそんな危機感を持った人は、まずいないと思いますが、少子高齢化、過疎化が急速に進んでいる現代の日本においては、地方の田舎町になればなるほど、この危機感は深刻な状況であり、10年、20年先どころか、数年先の未来に自分達の町が地図から消えてしまう日が来るかしれないと悩みの種になっています。

「それも統合の時代の象徴の1つ、町も国々も合併して大きな1つの集合体となる時期」という意見もあるかもしれませんが、これから先の統合の時代のキーワードは「自立した個の集合体」であり、依存型の人々、自治体、国がいくら1つにまとまったところで、結局のところは依存型の集合体となるだけであり、そのワンネスの世界は、支配者にとって、もっとも操りやすい、支配しやすい環境で、そうなると世の中はもっと悲惨な状況になってしまいます。

日本でいえば、もうすでに人口の減少とともに、完全に田舎は高齢者の住処、都会は若者の住処と二極化されいて、その都会の若者達は、年をとっても田舎に帰ることなく、この行く末は、前述したとおりに地図上から多くの田舎町が姿を消していくことになります。

「本当の豊かさ」に人々が気づけば、都会と田舎、どちらが本来の人間にとって、本来の自分にとって求めている環境であるのかは直感的に分かるものであり、資本主義経済が行き詰まっている今、自然と多くの人々が里山、田舎町を目指して都会から分散していく可能性が高いでしょうが、まだまだ今の段階からそれを気づける人々は僅かであり、やはりしばらくの間は、地方自治体が努力して、田舎の魅力、自然の中の生活の魅力を発信して伝えていく必要があると思います。

スコットランドの独立問題を皮切りに、これから先に世界規模で分離と統合の過渡期が続くと思いますが、すべての根源は「自立した個」であることが重要であり、その最終形態は、1人ひとりが「地球人」であることを自覚することだと思います。

そのためには、子どもの頃からの保育や教育、子育て環境というのが非常に大事であり、特にこれからの時代を担う子どもたちには、今回ご紹介した智頭町の“まるたんぼう”のような地域それぞれにあった自然育児が大切になってくると思います。

こういった環境で、子どもの誰しもが持っている純粋な魂を汚すことなくそのまま育って大人になれば、未来は民族同士の紛争もなくなり、国境も何もなくなって、皆が地球再生と宇宙の進化のために、自然な形で平和的に協力しあえる社会になると思います。

ここ八ヶ岳でも、麻の栽培復活、産業化を目指すのはもちろん、子育て環境や教育の分野も整えていき、また住んでいる人々がもっと豊かに暮らせる工夫を行政ともタイアップして色々と進めていきたいと思います。