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イスラエルにあるガリラヤ湖は、イエス・キリストの伝道活動だけで有名ではなく、今から100年以上も前の1909年にイスラエル最初の「KIBBUTZ(キブツ)」が誕生した場所としても有名です。

KIBBUTZとは、ヘブライ語で「集団・集合」を意味する言葉であり、簡単にいえば自給自足のコミュニティのようなものであります。

軍事力やテクノロジーといった分野で最先端を行くイスラエルですが、実はコミュニティにおいても世界最先端の実績を誇っており、資本主義経済の崩壊が予想されている今、地域共同体の必要性が日本だけでなく世界的に求められている中で、イスラエルのキブツといえば、その最も理想的なモデルの1つであると言われています。

「自由」を追い求めすぎると現在の世界全体の姿である競争と格差社会の資本主義国家となり、一方で「平等」にばかり偏り過ぎると、今度は自由の一切ない、一見平等のようで実際は様々な面で不平等ともなる社会主義国家となりますが、この「自由」「平等」をバランス良く実現したコミュニティがキブツであります。

イスラエルのコミュニティ・キブツは、そこのキブツへの参加が決まれば、その人やその家族は、そのキブツの家族の一員のような立場になり、住む場所は与えられ、食事も三食無償で食べられることができます。

もちろん対価として支払うのはお金ではなく、基本的にはキブツの中の労働で貢献することになります。

ただ、その労働も今の日本社会のように朝から晩まで連日働きづくめのような生活ではなく、朝から午後14時頃までの労働で1日の仕事は終わり、そこからは自由に自分の時間を好きなことに使うことができます。

また、労働内容もキブツを運営していくのに必要な労働であり、皆が食べるものを生産する農作業や漁業、酪農などであったり、食事を作る食堂での調理や配膳などの作業であったり、一般的に考える対外サービスをするための経済活動の労働とは違い、自分や自分たちの家族、仲間が生きて行くための労働であり、家事や家業の延長線に近いものであります。

もちろん、何かしらの事情で働くことができない人もキブツにおり、必ずしも労働だけがキブツに貢献することではありません。

当然ながら小さな子供や老人も働けないので、そのためキブツの中には保育園や幼稚園、老人ホームのような施設も完備されているケースが多いようです。

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※ガリラヤ湖のキブツの幼稚園

今回のイスラエル訪問では、ガイドのバラさんがかつて所属していたガリラヤ湖畔のキブツの1つを簡単にご案内頂きました。

ここでは500名前後のキブツメンバーが生活しており、独身寮の集合住宅から家族用の一戸建て、老人ホームまで様々な生活施設が点在していました。

イスラエルのキブツで興味深かったのは、子供の教育や生活スタイルであり、このキブツでは小さな子供は2歳や3歳の幼稚園前の頃から親元を離れて子供のキブツ寮みたいな施設で集団生活をするようであり、親の代わりに子育てや教育担当のメンバーが、様々な子供の面倒を見てくれるそうです。

とはいえ、同じ敷地内で寮生活をしているようなものなので、いつでも会える状況ではありますが、基本的には寝床は別で普段は子供グループと大人グループは別れ、それぞれ学校や仕事が終われば家族が合流し、そして夕食は家族全員で食堂に行って一緒に食事をとるそうです。

ユダヤ人は自立している人が多く、またノーベル賞受賞者も多いように天才や商才に長けた人を多く輩出しているのも、何か幼少期の頃からの子育てや教育システムに大きなポイントがあるのかもしれません。

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こちらはキブツの中にある地下シェルター。

これもまたキブツには欠かせない必需施設のようで、いつなんどき、国が危機的な状況に見舞われるかわからないイスラエルにおいては、こういった万が一に備えた危機管理は万全を期しております。

Beit_Guvrin

一般的なキブツの規模は、正規のメンバーが200~300名ほどが最も多く、それに子供や青年も加わってひとつの村を形成しています。

一応はリーダーとなるような代表者はいるものの、同じ人がずっとリーダーではなく、2年に1度などのペースで入れ替わり制となっており、常に誰かが権力を持たないように協議の上でバランス良くコミュニティを運営しているようです。

また外部より新たにキブツに参加したいという人がいたら、まずは一緒に数ヶ月から半年なり仕事をして皆で様子を見ていくことから始まり、最後は全員で投票によって参加の可否を決めて、キブツのメンバー入りを決めていくみたいです。もちろんいつ出て行くのも個人の自由です。

現在、イスラエルのキブツの数は270ほどのグループがあり、農業生産ではイスラエル全体の40%の生産量を占めるほど農村コミュニティとして国を支えるほどの影響力を持っています。

初代首相のベングリオンをはじめ、キブツからは多くの政治的なリーダー達を輩出しており、イスラエル人口の4%程度であるキブツの構成員が、イスラエル議会の15%の議席を占めている時代もあったようなので、イスラエルの政治や経済の核にはキブツがあるといっても過言ではないほどです。

縄文時代

かつて日本もまた、数十人から数百人規模の集落が全国各地に点在しており、その中では当然貨幣なども利用されずに、皆が家族のように1つとなって助け合い、自然とも人とも循環しながら共に生きてきた時代があったのだと思います。

それが今となっては、同じマンションに住んでいても隣人の名前も顔もわからないどころか、同じ屋根の下に暮らす家族同士が憎しみあって殺しあう社会。

イスラエルのキブツの人々がそんな日本人の現状を見たらどっちの国の方が危険と思うでしょうか。縄文人もまた自分たちの子孫、未来人の成れの果ての姿を見てがっかりすることでしょう。

自分と家族、自分と隣人、自分と他人と誰とでも線引きして分離した距離感を持っている限りは、いつまで経っても民族同士の争いは終わらず、人種や国境や越えてワンネスの世界へと入ることは出来ないと思うので、これから先に地球人が1つとなるためには、まず身近な人々との関わりの中で境界をなくしてワンネスとなることが必要だと思います。

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まずは皆が生きるに困らない環境を作り出すこと。

そのための第一歩となる食の自給が今できることとして最も重要なことであり、キブツが農業コミュニティとして始まって今に至っているように、やはりコミュニティや村づくりの始まりは食の生産から始まると思います。

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八ヶ岳の田んぼも、今年も無事に収穫が終わり、来年には一気に規模を拡大して農をベースとしたコミュニティ活動を本格的に始動していけたらと思っています。

農業講座なども年内に次年度の募集が始まると思うので、農業の勉強だけでなくコミュニティ活動に感心のある方などは是非ともご参加いただけたら幸いです。