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宇宙船地球号
「宇宙船地球号(Spaceship Earth)」という言葉は、20世紀アメリカの建築家・思想家、バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)によって有名になった。

彼は1963年、『宇宙船地球号操縦マニュアル(Operating manual for Spaceship Earth)』を著し、宇宙的な視点から地球の経済や哲学を説いた。

彼はこの書籍で、地球と人類が生き残るためには、個々の学問分野や個々の国家といった専門分化された限定的なシステムでは地球全体を襲う問題は解決できないことを論じ、地球を包括的・総合的な視点から考え理解することが重要であり、そのために教育や世界のシステムを組みなおすべきだとした。

彼は化石燃料や原子力エネルギーや鉱物資源などの消費について、彼独特の包括的アプローチを反映しながら次のように述べた。

「私たちがまず理解するのは、物質的なエネルギーは保存されるだけでなく、つねに『宇宙船地球号』に化石燃料貯金としてためられて、それは増える一方だということだ。この貯金は光合成や、地球号表面で続けられる複雑な化石化の過程によって進められ、さらには霜や風や洪水や火山、地震による変動などによって、地球の地殻深くに埋められたものだ。もし私たちが、『宇宙船地球号』の上に数十億年にもわたって保存された、この秩序化されたエネルギー貯金を、天文学の時間でいえばほんの一瞬に過ぎない時間に使い果たし続けるほど愚かでないとすれば、科学による世界を巻き込んだ工業的進化を通じて、人類すべてが成功することもできるだろう。これらのエネルギー貯金は『宇宙船地球号』の生命再生保障銀行口座に預けられ、自動発進(セルフ・スターター)機能が作動するときにのみ使われる。」

フラーは、地球の歴史とともに蓄えられてきた有限な化石資源を燃やし消費し続けることの愚を説いた。

これらの資源は自動車で言えばバッテリーのようなものであり、メイン・エンジンのセルフ・スターターを始動させるために蓄えておかねばならないとした。

メイン・エンジンとは風力や水力、あるいは太陽などから得られる放射エネルギーなどの巨大なエネルギーのことであり、これらのエネルギーだけで社会や経済は維持できると主張し、化石燃料と原子力だけで開発を行うことはまるでセルフ・スターターとバッテリーだけで自動車を走らせるようなものだと述べた。

彼は人類が石油やウランといった資源に手を付けることなく、地球外から得るエネルギーだけで生活できる可能性がすでにあるのに、現存する経済や政治のシステムではこれが実現不可能であると述べ、変革の必要性を強調した。

「宇宙船地球号」という言葉を普及させたバックミンスター・フラー(1895年7月12日 - 1983年7月1日)は、アメリカのマサチューセッツ州出身の思想家であり、デザイナー、建築家、発明家、はたまた詩人としても知られる現代のレオナルド・ダ・ヴィンチとも言われていました。

フラーは、地球は完璧にデザインされた宇宙船であり、太陽はエネルギー供給をしてくれる母船であると提唱していました。

また宇宙船地球号には操縦マニュアル(取扱説明書)がないことが大きな特徴であるとも言っています。

地球は、意図的に操縦マニュアルがなくデザインされた宇宙船であり、これは進化のプロセスにおける一定期間までは、人類は無知でいることで知性をフルに使う必要があったからのようです。

ただ、もうそろそろ地球は閉鎖空間の宇宙船であり、自分たちの船を汚し続けたらやがて永続できずに滅亡の道を歩むことを地球人は自覚しなければならず、循環する文明社会の構築を旧くからフラーは提唱しています。

BuckminsterFuller

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ドームハウスの産みの親としても知られているフラー博士。

この三角パネルを組み合わせた幾何学のジオデシック(球体)構造は「より少ないもので、より多くのことを成す」というフラー独自のコンセプトで生み出されたものであり、この理論を応用していくと、まるでSF映画の世界のような現象を現実に作ることができます。

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その1つが、フラーがデザインした「クラウド・ナイン (浮遊都市)」

実は、ドームハウスでも使われている球状の構造体というのは、ある一定のサイズを超えると巨大な球体の中の暖められた空気によって、その構造体そのものが空中に浮遊するという計算式があります。

直径30mのジオデシック球体は、構造物の重量が3トンで7トンの空気を内包します。この空気と構造物の重量比率は約2対1となります。

これが直径60mの球体にした場合、空気の重量は56トンにまで増加するのに対して、構造物の重量はわずか7トンしか増加しません。この時の空気と構造物の比率は8対1となります。

さらに直径を倍の120mの球体にすると、構造物の重量は15トンに増加するのに対して、内部の空気の重量は約500トンにまで増加します。空気と構造物の比率は33対1となります。

つまりジオデシック球体(ドームハウス構造)は、直径(ボール)の大きさが大きくなればなるほど、少量の構造物だけで最大の空間を作れるようになり、その内部に「空気」を大量に内包できるようになります。

仮に直径800mの球体とした場合、内部の空気が非常に膨大となり、空気と構造物の比率は1000対1となります。

すると、構造物そのものの重量は相対的に無視できる大きさとなります。

このサイズの球体を表面材のない完全開放型のアルミニウムフレームで作ると、太陽光線がフレームの間を通り抜け、反対側の凹面状の球面を構成するアルミニウムの構造部材に反射して球体の内部に戻り、内部の大気を徐々に適温まで暖めます。

球体内部の温度が華氏1度上昇するときに球体から押し出される空気の重量は、球形フレームのジオデシック構造物の重量より大きくなります。

これは内部の空気の重量と構造物の重量の合計が周囲の同体積の大気の重量よりもずっと軽いことになります。

つまり、ジオデシック球体とそれを内包する空気の集合全体が、周囲の重い大気を押しのけて空に向かって浮遊する状態が起こることを意味しています。

この原理は、渓谷にかかる大きな霧の層に太陽光線が当たると、霧の層の内部の空気が暖められて、霧の層が空高く漂う・・・いわゆる「雲が作られる原理と一緒」であります。

つまり、ジオデシック球体は、直径が800mを超えると雲のような浮遊可能な構造になるというのが、フラー独自の理論であり、計算上は実現可能なことのようでした。

この空飛ぶ球体型の大都市は、何千メートルであろうとも望みの高度にキープすることも可能であり、何千人もの乗客を収容できると言われています。

天空の城ラピュタは、決して夢物語ではなく、古代の地球、はたまた地球以外の惑星ではこういった技術が当たり前に活用されており、神聖幾何学を使った1つのフリーエネルギー理論であります。

人口の増加と都市化が進み、地表の大地のみで人類が生息するのは、地球にとっても負荷が大きいことであり、そう遠くない未来に地球人は空中都市によって生活をしているかもしれません。

ミニ地球をたくさん作って空に浮かばせる未来都市。

その地表に住むのではなく、ミニ宇宙船地球号の内部での生活になります。

そこでは食べるものから空気を含め、すべてが循環して完結するような仕組みでないと、このミニ地球は崩壊して中にいる人類も滅亡していきます。

規模は違えども、70億人以上も乗せた宇宙船地球号も同じ仕組みであり、水も空気もあらゆる資源も地球外からはやってこないので、その内部だけで継続できるように循環させる必要があります。

そろそろ、人類も宇宙船地球号の操縦マニュアルを作り、この宇宙船の維持・運営方法を真剣に考えていかないと、増えすぎた乗組員が減らされることもあるかもしれません。

ドームハウスは、そういった宇宙船地球号に自らが乗船していることを気づかせてくれる1つのツールであり、これを良い形でこれから普及させていけたらと思っています。