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「翁(おきな)」の蕎麦。

美味しい蕎麦の激戦区である八ヶ岳でも、トップクラスの人気を誇る名物蕎麦屋の翁。

蕎麦好きの自分も初めて訪れて衝撃を受け、その後連日通い詰めたほど本当に美味しい蕎麦を出すお店です。

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先日、この翁の創業者である高橋邦弘名人を招いての蕎麦会に参加する機会がありました。

高橋邦弘名人。

その名を聞いてピンと来る方もいるかもしれませんが、NHKのプロフェッショナルでも特集されたり、洞爺湖サミットで蕎麦を振舞ったりと、日本の蕎麦打ち名人の中でもトップに君臨する達人です。

蕎麦打ち一筋40年以上のキャリア。

東京で蕎麦屋を始めたものの、年間を通して安定した質の蕎麦粉が入って来ないという理由から、拠点を八ヶ岳に移して自家製分を開始、その後は蕎麦を教えるために広島へ飛び、現在は別府で完全会員制&予約制の小さな蕎麦屋で弟子達の教育にも励んでいます。

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蕎麦打ちは前傾姿勢のため、もはや日常生活でも前かがみに腰が曲がってしまっているようですが、長年の無理がたたって近年は脊髄の首の骨を痛めたり、身体中のあちこちに負荷がかかっているようです。

それでも今でも現役で蕎麦打ちをするのは、ただ蕎麦を打つことが好きで楽しいからと。

「お前、この歳にまでなってまだ稼いでいるのか?」

先日、小学校時代の同級生に会ってそう高橋名人は言われたそうです。

「そういえば、もう70歳も過ぎて稼ぐ必要もない年齢だけど、まだ稼いでいるな」

その理由はお金でも名誉でもなく、ただ好きで楽しいから。

ちなみに高橋名人の打つ蕎麦は、蕎麦粉100%のみで打つ十割蕎麦ではなく、つなぎに小麦粉を混ぜた二八蕎麦です。

二八蕎麦の生みの親とも言える高橋名人ですが、十割蕎麦ではなく二八蕎麦にこだわる理由もまた興味深いものです。

蕎麦打ち名人の中には「十割蕎麦でなければ蕎麦でない」と豪語する方もいるようですが、高橋名人は十割蕎麦を否定するつもりはないものの、自分は二八蕎麦にこだわるようです。

その理由は複数あり、新蕎麦の時期であればつなぎがなくてもボロボロ切れないで上手く蕎麦が打てるようですが、やはり年間を通して安定した蕎麦打ちをするには十割蕎麦は向いていないようです。

安定した質の蕎麦粉が手に入らないから八ヶ岳にまで移住して自家製分にこだわったように、十割蕎麦では常にイメージした蕎麦打ちができないため、高橋名人は蕎麦打ちが常に安定して味も美味しい二八蕎麦にこだわっているようです。

その最大の理由は、もちろん十割蕎麦は二八蕎麦に比べて打つのが大変という作業のつらさもあるようですが、何よりも蕎麦打ちをしていて自分自身が楽しくないからのようです。

楽しいか楽しくないか。

自家製分へのこだわりも、二八蕎麦へのこだわりも、高橋名人の物事を決める基準は常に自分自身中心、自分が楽しいか楽しくないか。

これは高橋名人に限らず、世の中の偉人、達人の多くは、常に自分自身にとても正直であり、楽しくないことはやらず、楽しいことだけを選択してこれまで生きてきて、そして周囲が驚くような実績を出したり、いわゆる成功を成し遂げているように思えます。

好きか嫌いか、楽しいかつまらないか。

嫌いなもの、つまらないものは選択せず、好きなもの、楽しいものを選択すること。

頭ではなくハートで感じる感覚に従うこと。

これが、とてもシンプルな人生の流れを上手く進めるコツだと思います。

大事なことを再確認させて頂いた高橋名人との蕎麦会。

八ヶ岳の翁は、現在はお弟子さんが引き継いで営業されていますが、本当に美味しい蕎麦なので、八ヶ岳にお越しになった際には是非お立ち寄りください。

翁(おきな)